施工秘録
美建の挑戦の軌跡
施工期間
制 作2022.2 - 6
組 立2022.5 - 9
新技術との遭遇
三次元測定機との出会い。
それは挑戦への予兆だった。
「巨大な曲線の構造物を一瞬で測定する機械、そんなイメージが頭にあり、いつか自分で作ってみようと思っていた」と植松社長は明かす。
そんな折、他社から三次元測定機を紹介され、想像以上の高機能性に驚き即決で購入した。量産型の自動車業界では周知の機械だったが、多品種少量生産の建築業界では事情が異なる。生産性向上を狙う美建は、同業他社の先陣を切って導入に至った。
操作性の良さも魅力のひとつだ。
プロジェクト始動
福島県双葉町の復興プロジェクトが始動。
浅野撚糸 双葉工場の鉄骨製作として参画することに。
2011年、東日本大震災で被災し福島第一原発事故の影響で全町避難となった福島県双葉町。町民の居住が再開される2022年に先駆け、浅野撚糸社の事業所「フタバスーパーゼロミル」の建設が決定。撚糸工場、オフィス、タオルショップ、カフェからなる複合施設として、雇用の創出や復興のシンボルとして
2011年、東日本大震災で被災し福島第一原発事故の影響で全町避難となった福島県双葉町。町民の居住が再開される2022年に先駆け、浅野撚糸社の事業所「フタバスーパーゼロミル」の建設が決定。撚糸工場、オフィス、タオルショップ、カフェからなる複合施設として、雇用の創出や復興のシンボルとしての活躍が期待されていた。「ゼロ」を模したデザインが特徴的なこの建設で、美建は鉄骨の加工を担う。楕円形加工は技術的に高いハードルだったが「面白そうだ」という植松社長の一声で参加が決まった。
の活躍が期待されていた。「ゼロ」を模したデザインが特徴的なこの建設で、美建は鉄骨の加工を担う。楕円形加工は技術的に高いハードルだったが「面白そうだ」という植松社長の一声で参加が決まった。
施工
“ゼロ”を印象的に見せる
美しい曲線は三次元測定機の
操作性と精度の高さがカギに。
楕円形の鉄骨組付けを、
ほぼノーエラーで完遂。
施工にトライ＆エラーはつきものだが、今回は三次元測定機の精緻な測定値に助けられ、ほぼノーエラーで進行した。工期は様々な事情で短縮されるも予定通りに納品に至る。「職人の創意工夫や技術、関係各所との協働も大切だが、何より、正確な計測が一瞬でできたことで作業効率は格段に上がった」と植松社長は評価する。
現場の声
柱と梁が斜め、かつ勾配のある難易度の高い物件に対し
三次元測定機で精度管理を徹底。
今回、図面担当者として誤差を限りなく無くすために、以下の2点を実施しました。
- 1平面形状が楕円のためポイントを設けて擬似円に置き換え。
- 2X-Y-Z方向の座標を計測し、鉄骨専用CADに入力。
また、外壁が楕円のため、横銅縁はポイント間を擬似円として製作。縦銅縁の配置は楕円の座標で配置しました。柱と大梁は平面の0（ゼロ）の中心から放射線上に配置され、外周部は0に沿って柱をつなぐような配置でした。そこで、工場加工と現場精度の観点から、外周部の柱側を現場溶接工法で提案し採用に。その際、梁の勾配段差を、通しダイヤフラムの厚さで調整して吸収。外周部を現場溶接にしたことで、施工誤差が吸収できました。外周部の梁は0に沿った楕円でしたが、ねじれがある曲げ加工はほぼ不可能と判断し、折れ梁で提案して採用になりました。
そして、屋根の母屋の取り合いは、一般的にピースを工場溶接しますが、今回はそれを現場で取り付けて溶接。ピースは上下の調整、角度も自由にできる形状としました。ただし、0の頂部を通る中心線上のピースは、基準確保の観点から工場での取り付けとしました。優れた技術と豊かな知見のある工場で製作したことが、今プロジェクトを成功に導いたと考えています。
図面担当 永島
精度確保のために三次元測定機を最大限に活用。
さらに長年の経験と職人技で難局を乗り越えました。
まず徹底したのは、外周大梁のネジレと曲面寸法について、すべて三次元測定機で測定後に出荷することでした。正確な測定が、確実な作業の基盤となり、整然と業務を進めることができたと思います。
そして、特に留意したのは放射状の大梁上の母屋の取り合いです。位置、高さ、方向調整ピースの取り付けを、慎重に行いました。
また、ハネ出し軒裏の勾配とネジレの調整は、これまでの経験をもとに、職人技を駆使して丁寧に実施。
現場溶接では、全体として建て起こし精度を高めるべく、梁チヂミ代による取付時のフクラミ対応などを、最後まで気を抜かずに、きめ細やかに処置しました。
経験豊富なメンバーによる緻密な計画と、勘どころを押さえた正確な作業が実を結び、無事に完成まで至ったことを嬉しく思っています。
現場主任 栗山
評価
斬新なフォルムは、
訪れる人の記憶に残り
新たな測定方法は、
建築業界のスタンダードへ。
従来の計測は職人同士の密な連携が必要とされ、手順も煩雑だったという。三次元測定機は、大型の構造体も1人での計測を可能にし、精緻な計測は施工の時短と精度アップにつながった。この施工の経緯は日本建築学会にも届いたらしい。
構造体の計測手法に関する指導書がアップデートされる日も近
従来の計測は職人同士の密な連携が必要とされ、手順も煩雑だったという。三次元測定機は、大型の構造体も1人での計測を可能にし、精緻な計測は施工の時短と精度アップにつながった。この施工の経緯は日本建築学会にも届いたらしい。
構造体の計測手法に関する指導書がアップデートされる日も近いのではないか。植松社長は、この技術が業界全体の進化を加速させることを大いに期待している。
ちなみに美建では、早くも次のテクノロジー導入に着手し、さらなる業務の効率化を図っているという。
その報告は、また次回。
いのではないか。植松社長は、この技術が業界全体の進化を加速させることを大いに期待している。
ちなみに美建では、早くも次のテクノロジー導入に着手し、さらなる業務の効率化を図っているという。
その報告は、また次回。
